『エミール』 5ページ

子どもに純真な心をも持ち続けさせるよい方法は一つしかないと思われる。それは、子どものまわりにいるすべての人が純真なものを尊重し、愛することだ。

人間が生きている間、決して消え失せることのない唯一の情欲は自愛である。

死に対する用心深さが死を恐ろしいものにし、死の接近を促進する。

歴史は人生の方面よりも悪の方面をいっそう強く描き出す。歴史家にとって革命や困難は面白い材料だが、平和に栄えゆく世は材料にならないから。

教育とは自然の性、すなわち天性に従うことでなければならない。国家あるいは社会のためを目標とし、国民や公民になす教育は、人の本性を傷つけるものである。

ある真実を教えることよりも、いつも真実を見出すにはどうしなければならないかを教えることが問題なのだ。

自然を見よ。そして自然が教える道をたどっていけ。自然は絶えず子供を鍛える。

世界で一番有能な教師よりも、分別のある平凡な父親によってこそ、子供は立派に教育される。

人間には二つの誕生がある。一つはこの世に現われた誕生、一つは生活に入る誕生である。

勇気がなければ幸福は得られない。戦いなしには美徳はありえない。